アルバイト歴5年のキャストHさんは、当日のことを思い出す。「(店舗で販売用に置いていたぬいぐるみの)ダッフィーを持ち出して、お客様に“こ れで頭を守ってください”と言ってお渡ししました」。彼女は会社から、お客様の安全確保のためには、園内の使えるものは何でも使ってよいと聞いていた。そ こで、ぬいぐるみを防災ずきん代わりにしようと考えたという。
同じくキャストのIさんは、店舗で販売していたクッキーやチョコレートを無料で配り始めた。「必ずみなさんにお配りしますから、その場でお立ちに ならないでお待ちください」と声を掛けながら。「お客様から配ってくださいと言われたわけではなくて、時間もたって私もお腹が減ってきていたし、ゲストの みなさんはもっとお腹が減っているだろうと思ったので」。
ぬいぐるみが並んでいた壁も、お菓子が並んでいた棚も、売店内の商品はすっかりなくなっていた。
当日は雨交じりで気温は10度と冷え込んでいた。あるキャストは、お土産用のビニール袋や青いゴミ袋、そして段ボールまで引っ張り出してきて「こ れをかぶって寒さをしのいでください」と訴えた。段ボールは普段なら『夢の王国』にあってはならないものだ。それでもゲストの身の安全を確保するためなら 何でもしようと考えて行動した。家族で来園していたゲストは、「3月にしてはかなり寒かったので本当に助かりました」と答えていた。
またキャストのTさんは、じっと座り込んだままの状態が続いているゲストに話しかけた。「ずっと同じ姿勢のままだと体に良くないので、少し運動しましょうか」。
当座の安全を確保できたら、彼らは礼儀正しさやショーの実践を忘れていなかった。キャストのMさんはゲストの気を紛らせようと、お土産袋を掲げて 「みなさん、この絵の中に“隠れミッキー”(ミッキーマウスの形)があるのをご存じでしたか。よろしければ一緒に探してみてください」と投げかけた。
大きなシャンデリアの近くで余震の恐怖におびえている子供たちにはKさんが、「みなさん大丈夫です。僕はシャンデリアの妖精ですから、何があってもみなさんを守ります。大丈夫です」と笑顔を見せた。
(via toyolina)